『ママのダイヤを盗み出せ』(ママのダイヤをぬすみだせ)は、小学館「小学六年生」1973年7月号に掲載された短編。
ママのダイヤを盗み出せ
- 話数記号:六73.7
- 分類:原作短編
- 量:10ページ71コマ
- 発表:「小学六年生」1973年7月号
- 単行本:「てんとう虫コミックス『ドラえもん』」第7巻第7話
- 大全集:第1巻第49話
- アニメ化:1979年、2007年、2022年
あらすじ
玉子はのび太がアルバムを部屋に出しっぱなしにしているところを注意する。実はそれは、物置きの隅で見つけた玉子の子どもの頃のアルバムで、二人はそれを見かえし始める。その中に、指輪を付けた玉子の母親に抱っこされる写真があったが、玉子が言うことには、その何千万円もするという大きなダイヤの指輪は、忘れもしない25年前(1948年)の7月10日に、二人の怪しい男が忍び込んで盗んでいってしまったのだという。
それを聞いたのび太は、自分がいれば泥棒など追い払えたのにという。すると、ドラえもんはタイムマシンで昔のその日に行って、泥棒を追い払いに行くことを提案する。早速その日の家の近くに着いて、すぐに幼い日の玉子らしき少女を見つける。ゆっくり後をつけるが、気味悪がられて追い払われる。
その後玉子の家を見つけた二人は、ダイヤの指輪を近くで見守るために、家の中に忍び込む。中では玉子が母親におもちゃの出しっぱなしを叱られていたが、それを横目に部屋に入り、タンスの中からしまってあるダイヤの指輪を発見する。しかしそこで玉子と鉢合わせしてしまい、二人はダイヤを放り投げて逃げる。そのダイヤを見つけた玉子は、これを二人は盗みに来たのではと推理して、そしておよめさんごっこをするために、母親の言うことも聞かず、外に持ち出してしまう。
何千万円もする指輪をおもちゃにする幼き日の玉子に呆れるのび太とドラえもん。一方で、玉子が現代でで語っていた「二人の怪しい男」はまだ現れない。すると子供たちが遊んでいるところに紙芝居屋がやって来て、あろうことか、玉子は持っていた指輪を放り投げてそちらの方へ向かってしまう。
ダイヤを拾った二人は、仕方なく玉子の母親のもとに、彼女がそれを落としたことを伝えて返しに行く。ところが母親は、そのダイヤをもらってほしいと二人に頼む。二人は驚くが、実はその指輪はガラス製の安物なのだという。そして玉子の帰宅後、母親は玉子のだらしない性格を直すため、玉子に夕方遅くまで、あるはずのない指輪を探させるのであった。
現代に戻ると、そこには今でも泥棒が指輪を盗んだと信じ続けている玉子が、アルバムを見つめている。二人がそこにいると気づくやいなや、玉子はのび太に玄関にかばんが出しっぱなしであったことを注意するが、二人は「およめさんごっこ」「紙芝居」とキーワードを唱える。知るはずのない過去の出来事に関わる言葉をつぶやく二人を不思議がる玉子であった。
作品解説
本作品では、少なくとも親が子に何かの出しっぱなしを注意する場面が3回登場する。1つ目は冒頭ののび太がアルバムを出しっぱなしにする場面、2つ目はタイムスリップした先で、玉子が母親におもちゃの出しっぱなしを注意されるところを目撃する場面、そして最後3つ目は、現代に帰って来たのび太に玉子が玄関のかばんの出しっぱなしを注意する場面。
まず1つ目の展開で、タイムスリップの物語のきっかけが作られ、2つ目の展開で、親と子の性格の類似性・輪廻性が暗示される。そして現代に戻って、同じような展開が生じた時に、今度はタイムスリップで経験したことを踏まえて、主人公たちは違う行動を見せる。この3つのセットがあるストーリーの型は、タイムスリップが作中で登場するSF作品の典型例と考えられる。このようなストーリーは後の「バック・トゥー・ザ・フューチャー」シリーズなど多くの作品にみられるが、作品時期を考えた時に、1973年発表のこの作品がこれらの先駆けとなっている可能性が考慮される。
用語解説
- 紙芝居…街頭紙芝居を指す。1930年に東京で誕生したと言われる。自転車の荷台に紙芝居を乗せた紙芝居屋は、拍子木をカチカチとならして子供たちを集め、お菓子を売り、それを買った子供たちだけが紙芝居を見ることができるという形式で営む。戦前から戦後(玉子の少女時代)にかけて人気が高まり、最盛期を迎えるが、テレビ等の普及を受けて、1960年代以降は急激に衰退する。
アニメ化
過去3度テレビアニメ化がされている。
- 『ママのダイヤを盗み出せ』(A2.90)
水田版アニメ1979.7.14放送。
- 『ママのダイヤを盗み出せ』(A3.190)
水田版アニメ2007.8.17放送。
- 『ママのダイヤを盗み出せ』(A3.1230)
水田版アニメ2022.5.21放送。
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